嘸旦のこころ

「嘸旦」の意味は、音のない始まり。そして、無我の創造。
私たちは職人です。日々のたゆまぬ修練から生まれるつくり手の幸福感、石蔵の中に眠る過去の膨大な古作から立ちのぼる職人の息づかいや立ち居振る舞い、そこで交わされたであろう古の職人たちの無言の会話までも紡ぎ、作品として今の時代に表現していきたい。そのような思いからこの空間を「嘸旦」と命名しました。
ここでは、あまり知られていなかった九谷焼の価値観を私たちつくり手から使い手に直接伝えることで、九谷焼のあるライフスタイルの愉しみを、皆さんと一緒に探求していきたいと考えています。

建物について

日本海と霊峰白山に挟まれたこの豊かな土地で、私たちつくり手は、大地の恵みと自らの叡智をもって多様な文化を築きあげてきました。古くから蔵や石塀に用いられた観音下(かながそ)の石材は、その象徴とも言うべき素材です。
この地の自然と文化に対する敬虔な思いを表すべく、この石で建築を構築しました。石室のように神聖な内部空間を、トップライトからの自然光のみが照らすという極めてシンプルな構造をしています。私たちの思いを、SIMPLICITY 緒方慎一郎氏が形にしてくれました。
時は流れ、時代の大きな変化の中でこの石材は、良質な地層の消失と切り出す職人の高齢化により、この「嘸旦」をもって最後となりました。
[ 企画設計・基本設計 ] 株式会社 SIMPLICITY 緒方慎一郎
[ 実施設計 ] 株式会社 APOLLO

九谷焼について

色絵陶磁器の最高峰とも言われる九谷焼は、鮮やかな彩色と大胆な図柄、そして緻密な絵付けが特徴の華やかな陶磁器です。
およそ360年前、現在の石川県山中町九谷で古九谷が生まれました。一時廃窯したものの、その偉業を惜しむかのように、江戸時代後期から明治初期にかけ様々な窯(再興九谷)がこの地に生まれました。その後、国内外の多くの職人や技法を貪欲に吸収し、多様性に富んだ独特の上絵付スタイルを生み出し、時代の流れと共に進化し続け今に至ります。

錦山窯のものづくり

錦山窯は、緻密な絵付けを得意とする多くの窯元が集積している石川県小松市高堂町で、1906(明治39)年に初代吉田庄作が開窯した、金彩技法を特長とする窯元です。初代から伝わる伝統技法を習得した三代美統は、60年前に新しい金彩表現として生み出された「釉裏金彩」の技法を用い、さらに独自の工夫を加え工芸美を極めることで国指定重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。
窯を継承する四代幸央は、淡い色彩を幾何学文様に丁寧に塗り重ねた地肌に金彩を施す手法を生み出し、金襴手の表現に新しい世界観をつくりあげました。また、妻のるみこは、有機的な造形と直感的な彩色方法で独自の華やかなイメージを追及しています。
この三人の陶芸家の目指してきた伝統技法の継承と進化の上に、錦山窯はより新しい技術や材料を探し求めながら、色彩豊かな九谷焼の新しい世界観をつくり出そうとしています。

Contact

〒923-0031 石川県小松市高堂町 ト-18

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